猿の置物

先日の事

 

 

材料がたりなくなり

 

買出しに行く途中

 

本町のスクランブル交差点で

 

信号待ちしていた。

 

 

スパゲティ屋の隣が

 

空き地になっていた。

 

 

あそこは年配の店主が経営する

 

輸入雑貨屋があったのだ。

 

 

 

船橋に来て一年目。

 

 

 

なにをやっても鳴かず飛ばずで

 

夜は一組・・・二組・・

 

借金はガンガン増える一方。

 

 

ランチを始めてなんとか

 

昼だけはお客さんが来てた。

 

 

 

ランチは爆発してたが

 

600円のランチを

 

50人売ったって

 

一日3万ぐらいの売り上げだ。

 

 

人件費の足しに

 

少しなるだけだった。

 

 

 

ある日の事

 

両替しようと千葉銀に行った。

 

 

 

すると・・・

 

猿の置物が店頭に

 

売ってるではないか。

 

 

 

両替に行くたびに

 

猿の置物が目に付く。

 

 

 

今考えると

 

私は軽い欝だったのかもしれないが

 

 

 

猿が・・

 

「買ってくれ!買ってくれ!」

 

と言うのだ。

 

 

目もバッチリ合せて

 

語りかけてくるのだ。

 

 

 

情にほだされたと言うか

 

なんと言うか

 

買ってしまった。

 

 

最終的には6個の猿を買った。

 

 

あれから10年。

 

 

台風や震災やアクシデントで

 

猿は一つ割れ

 

二つ割れ

 

 

人にあげたり

 

とうとう最後の一匹になった。

 

 

なぜか、一番最初に

 

買った猿だけは割れなかった。

 

 

 

営業前に必ず猿の置物に話しかける。

 

 

 

こいつは言い返しては来ないけど

 

 

わたしの10年間の苦悩を

 

よく知ってるはずだ。

 

 

 

なんてことを

 

空き地を見たら

 

フッと思い出した。