【第29話】たまには思い出話でも

今から10年前だったんだが

 

全品200円で

 

営業していた

 

焼き鳥選科 一の酉。

 

 

1日平均5万から6万の間を

 

うろうろしていた。

 

 

家賃は13万だったか?

 

バイトを仕込みのとき一人

 

夜も一人。

 

 

今考えると

 

仕込みは俺一人で

 

十分だった気がする。

 

 

 

夜は満席になると

 

焼き鳥から手を離せないので

 

一人いたほうがよかったが

 

バイトを雇うんじゃなくて

 

夫婦でやるべきだっただろう。

 

 

 

その頃になって

 

養老の副社長さんに言われた

 

 

 

「商売は八百屋のような

 

パパママ店が基本だぞ・・

 

誰か見つけて一緒になりなさい。」

 

と言われたの

 

少し判ってきていた。

 

 

 

飲み代のツケが

 

店と俺を少しづつ歪めていた。

 

 

 

職人たちは給料を

 

週払いでもらっていた。

 

 

しかも使い切っているようだった。

 

錦糸町あたりで飲んで

 

二2、3日で使い切る。

 

 

 

でも飲みたい・・・。

 

 

 

ある時一人で

 

カウンターに来ていた

 

常連の職人がいた。

 

 

少し飲んでボトルを入れた。

 

 

お会計になり500円だか?

 

600円だか足りなかった。

 

 

職人はこう言った。

 

 

「マスター足りない分

 

明日でいいかな・・・・。」

 

 

いくらでも無いので

 

俺は「いいよ」と言った。

 

 

それから飲み代のツケが

 

一部に始まった。

 

 

 

ただ彼らは一週間すると

 

ツケを払いに来た。

 

 

親方達も自分の若い衆が

 

ツケをしてるか気にして

 

チェックしていたようで

 

俺もまぁ・・いいだろ。

 

 

 

なんて感じだった。

 

 

その当時33歳だったか?

 

34歳だったか?

 

 

記憶があいまいなのだが

 

 

 

職人と俺の間に

 

微妙な人間関係ができた。

 

 

 

ツケで飲ましている職人を

 

軽く見だした。

 

 

 

そして職人が暴れれば

 

力ずくで追い出したり

 

問題あるときは乗ってきた

 

自転車を投げつけたりした。

 

 

今考えると調子に

 

乗っていたんだろう。

 

 

 

しかしそれは

 

末広通り商店街だけなら通じる事だ。

 

 

わかる人にはわかるだろう。

 

トラブルが

 

いつもある通りだった。 

 

 

 

そして下町に二年近くもいると

 

近所中知り合いが多くなり

 

気持ちも大きくなっていた。

 

 

それプラス営業終了後の深酒だ。

 

 

 

そしてある日

 

店から家に帰ろうとしていた。

 

 

 

葛西橋通りの橋の手前の

 

交差点ですれ違いざまに

 

一人の男とすれ違った。

 

 

相手もなんだかも

 

虫の居所が悪かったのだろう・・

 

 

「チッ・・。」

 

 

と言った気がした。

 

 

酔っていた俺は

 

直ぐに喧嘩になった。

 

 

 

気が付いたときは警察を呼ばれ

 

俺は左目を腫らし

 

相手は耳の中から血をながして

 

城東警察に連れて行かれた。

 

 

 

深夜にだ。

 

別室に連れていかれ

 

事情を聞かれた。

 

 

さすがにそこで俺は反省した。

 

人生変えるために

 

飲食業に29歳ではいったのに

 

これじゃまた

 

すさんだ生活に逆戻りだと。

 

 

 

酔っ払い同士の喧嘩なんて

 

警察は事件にすることは

 

あまり無い。

 

 

 

よっぽどヒドケれば別だが。

 

 

刑事が来てこう言った。

 

 

 

「お互いに

 

訴える事もできるし

 

示談にもできる。

 

あんたはどうだ」

 

 

 

俺は言った。

 

 

「いや・・俺が悪かった」

 

 

刑事は

 

「そうか。

 

ならいいけど。

 

相手がな」

 

 

 

「後で何されるか

 

わからないから

 

怖くてできない」

 

 

と言ってるという。

 

 

 

俺は??

 

と言う感じだった。

 

 

話を聞くとこうだ。

 

 

 

前に包丁を

 

持ってきて店の前で立っていた

 

ヌキワさんを

 

覚えているだろうか?

 

 

 

俺が現場で警官に

 

色々聞かれているときに

 

マスターが警察に捕まったと聞き

 

駆けつけていたらしい。

 

 

 

そこでヌキワさんは

 

無駄に男気をだして

 

「お前・・

 

マスターになにか合ったら

 

砂町歩けなくするぞ」

 

 

と警官の前で

 

相手に凄んだらしい・・・。

 

 

話を

 

ややこしくしていたようだ(笑)

 

 

 

それは俺が絶対説得するという

 

約束をして釈放してもらった。

 

 

 

城東警察を出るとヌキワさんと

 

二、三人の職人が

 

深夜なのに待っていた。

 

 

 

「マスターあの野郎・・」

 

 

とヌキワさんが言っていた。

 

 

俺は

 

「いいんだよ。ヌッキー・・・。」

 

と言った。

 

 

彼らの気持ちは嬉しかった。

 

 

なんか知らないけど・・・

 

 

その晩は一人布団の中で泣いた。